規制改革実施計画において、新制度の検討に当たり参考とすべきとされたのは、米国のダイエタリーサプリメントの表示制度(以下「DS制度」という。)である。新制度の検討には、DS制度を含む米国の機能性表示制度について理解しておくことが重要となる。
 以下、米国における食品の機能性表示制度について整理する。

(1)ヘルスクレーム及び条件付きヘルスクレームの表示制度
 ヘルスクレーム(Health Claims)及び条件付きヘルスクレーム(Qualified  Health Claims: QHC)の表示制度は、今般の閣議決定により参考とすべきとされたものではないが、栄養表示教育法(Nutrition Labeling and Education Act:NLEA(1990年))に基づき、疾病リスク低減表示を行うものである3,4。サプリメント形状の加工食品や生鮮食品を含む全ての食品が対象である。新規の表示をしようとする場合は、事業者が食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA)に申請を行い、FDAの個別審査を受ける必要がある。
 ヘルスクレームは、栄養成分、その他成分、特定の食生活、運動等と疾病リスク低減の関連性に関する表示であり、専門家の間に十分な科学的合意(Significant Scientific Agreement: SSA)が得られていることが要件とされ る5
 QHCは、栄養成分、食品と疾病リスク低減の関連性に関する条件付き表示であり、ヘルスクレームよりも科学的根拠レベルが低いものとして、科学的根拠レベルに応じた機能性表示(ヘルスクレームの科学的根拠レベルをAとすると、QHCはB~Dレベルに相当。)を行うものである6

(2)DS制度
 DS制度は、今般の閣議決定により参考とすべきとされたものであり、ダイエタリーサプリメント健康教育法(Dietary Supplement Health and Education Act:DSHEA(1994年))に基づき、構造/機能表示を行うものである。錠剤、カプセル、粉末、ソフトジェル、液体等のサプリメント形状の加工食品が対象である。
 DS制度は、前述のヘルスクレームやQHCとは異なり、FDAが定めた一定の規制の下、事業者の自己責任で構造/機能表示を行えるものである7。ただし、DS制度では、疾病リスク低減表示をはじめ、疾病名を含む表示等は原則として禁止されている8。これに関連して、国の評価を受けたものではない旨及び疾病の治療等を目的としたものではない旨の表示が必須とされている。
 また、DS制度においては、届出制が導入されている。具体的には、構造/機能表示を行おうとする製品については、FDAに対し、販売後30日以内に製品情報を届け出なければならないとされている9。なお、販売前の届出については、新規成分(New Dietary Ingredients: NDI)を使用しない限り、原則として不要とされている10
 他方、DS制度には数々の問題点が指摘されている。最も重要なものとして、製品の有効性に関する科学的根拠情報が得られない可能性が挙げられる。DS制度では、有効性に関する表示内容の根拠について、届出・開示の対象ではなく、根拠情報を開示するかどうかは事業者の任意とされている。このような中、FDAが事業者に対して根拠情報の提出を求めても、それに応じない事業者がいることをFDA自身が認めているのが実情であり、消費者が根拠情報にアクセスできない可能性がある。また、FDAは事業者向けの指針11において、有効性の実証に当たり事業者が考慮すべき点を示しているが、それが十分に考慮されていない可能性や科学的根拠不十分な製品が流通している可能性が、保健福祉省監察総監室(Office of Inspector General, U.S. Department of Health and Human Services)より指摘されている12

 新制度の検討に当たっては、このようなDS制度の問題点を踏まえ、安全性や有効性に係る科学的根拠のレベルを適切に設定するとともに、科学的根拠を含む製品情報について透明性の高い制度とすることが必要である。
 なお、閣議決定の趣旨を踏まえ、本制度における食品の安全性や機能性は企業等の責任において確認されるものであり、特定保健用食品のように国が事前に確認するものではないことにも留意が必要である。


3 米国の「ヘルスクレーム」に該当するのは疾病リスク低減表示のみであり、栄養素機能強調表示(Nutrient function claims)、その他の機能強調表示(Other function claims)、疾病リスク低減表示(Reduction of disease risk claims)の総称をヘルスクレームとするコーデックスの考え方とは異なっている。
4 QHCについては、2003年9月から暫定措置として施行されている制度である。
5 許可されている表示例の一つに、「健康な食事の一環として、カルシウムとビタミンDの適切な摂取と同時に身体活動を行うことで、その後の人生における骨粗鬆症のリスクが低減される可能性があります。」がある。
6 許可されている表示例の一つに、「セレンは前立腺がんのリスクを低下させる可能性があります。本クレームに関する科学的根拠は決定的なものではありません。そのレビューに基づいて、FDAはセレンが前立腺がんのリスクを低下させる可能性があることには同意していません。」がある。
7 DS制度で認めている機能性表示としては、①人の構造や機能に影響を与えることを意図した栄養素又は食事成分の役割に関する表示、②栄養素又は食事成分が人の構造や機能に作用する、既知の機序に関する表示、③古典的な栄養素欠乏症(壊血病、ペラグラ等)に関する表示(ただし、当該欠乏症が米国でどの程度見られるかの言及が必要。)、④全般的健康度(general well-being)に与える健康に関する表示などがある。
8 疾病の診断(diagnose)、緩和(mitigate)、処置(treat)、治療(cure)、予防(prevent)等の文言を明示又は暗示する表示、疾病リスク低減表示、疾病強調表示等を行うことは禁止されている。
9 表示責任者の住所、機能性表示の文章、使用成分名、製品名、表示責任者の署名等を届け出ることとされている。有効性に係る科学的根拠は届出の対象とはされていない。
10 米国において、1994年10月15日以前に、ダイエタリーサプリメントに使用、販売された実績のなかった成分については、当該成分の安全性評価を事業者が行い、販売75日前までにその結果をFDAに通知しなければならない。
11 Guidance for Industry: Substantiation for Dietary Supplement Claims Made Under Section 403(r) (6) of the Federal Food, Drug, and Cosmetic Act(2008.12)
12 保健福祉省監察総監室が2012年10月に公表したレポート(Department of Health and Human Services, Office of Inspector General, Dietary Supplements: Structure/Function Claims Fail To Meet Federal Requirements)では、同室が体重減少及び免疫機能に関する製品(127品)を対象に表示の適切性を調査した結果、
・事業者から提出された臨床研究(557件)のうち、有効性に関する表示内容の実証に重要な4つの観点(表示の意味、表示とその科学的根拠との関連性、科学的根拠の質、科学的根拠の総合性(Totality of Evidence))を全て考慮したと考えられるものは、1つもなかったこと
・上記の臨床研究(557件)のうち、否定的データであったのはわずか4%であり、49%は当該製品の摂取が想定される集団とは異なる集団を対象としていたこと
・7%の製品で、記載が必須である表示(国の評価を受けたものではない旨及び疾病の治療等を目的としたものではない旨の表示)が表示されていなかったこと
・20%の製品で、疾病に関する表示がなされていたこと 等
がみられたとして、DS制度の問題点について見直しの必要性が指摘されている。


消費者庁『食品の新たな機能性表示制度に関する検討会報告書(案)』より

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